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慈愛園 エスターホーム

建て替え新築するエスターホームの外観に、慈愛園100年の歴史を語る昭和初期の旧ホームの景観を保存。

2000年
熊本市中央区

高齢の卒園生が「俺たちのホームが残った!」と喜んでくれた。
園長先生は「児童福祉施設は一時的に子どもを受け入れるホテルであってはいけない」と言われた。

建築概要
児童養護施設
床面積:352.26㎡
木造平屋建て

慈愛園はアメリカの宣教師モードパウラス女史が設立された福祉施設です。
広大な敷地に児童養護施設5ホームの他に乳児ホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、ケアハウスなど複数の福祉施設が建っています。

エスターホーム建て替えの経緯ですが、慈愛園の中でも特に大きな特別養護老人ホームの建て替えには広い敷地が必要で、その範囲に旧エスターホームがあったのです。
そのためエスターホームを園内の別敷地に移転新築をする必要があり、風設計室に設計依頼をされました。 園長先生が言われるには「風さんは慈愛園の隣で、園の子供たちのことをよく知っているから」ということでした。

そして、指定された敷地には昭和初期に建てられた古い建物(旧子供ホーム)があり、それを解体する必要性があったのですが、慈愛園の歴史を物語る建物が姿を消してはいけないと考え、園長先生にホームの景観保存を提案しました。
本当は建物そのものを保存できれば良かったのですが、木材の状態が想像以上に悪く、そのまま新しい建物に組み込むのは難しかったので、屋根瓦を洗って再使用し、外観のプロポーションとのディテールを忠実に再現しました。
急ぎの仕事で設計期間が限られており、建物を実測しデザインを再現して、理事会に図面と模型を提出できた時は安堵しました。

〈慈愛園子供ホームについて〉
慈愛園の子供ホーム(児童養護施設)は平屋を原則としていて、3歳から18歳までの男女の子供たちが少人数(20人以下)で、兄弟が家庭で過すように生活をします。
これはモードパウラス女史の理念から来ており、園の子供たちに普通の家庭に近い環境で育って欲しいと言う願いからです。
また、子供ホームの部屋は畳敷きになっており、毎日布団の上げ下ろしをして生活します。
お風呂は昔ながらの薪で焚く五右衛門式になっています。 誰かの世話になり、世話をするという相互扶助の精神が基本になって、子供たちの共同生活が成り立っています。

日本中に様々な「ホーム」と呼ばれる福祉施設がありますが、その呼び名は慈愛園の子供ホーム、老人ホームが起源と言われています。

 

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