熊本県食肉衛生検査所本館の建て替え工事。
隣接する畜産流通センターの食肉検査及び県内各地へ出向いての食肉検査業務を行う施設で、高機能な検査業務に対応でき、衛生管理向上やバイオセイフティレベル確保が可能な施設への建替えです。
プロポーザルに応募する前の施設見学で、はじめて業務の内容や検査担当職員さんは全員獣医師であることを知りました。 食肉検査というハードな業務に携わっておられる事と共に職員の方々の使命感や責任感に率直にリスペクトを感じ、同時に産業動物へ深い感謝の気持が生まれました。
それをベースに、設計者として食肉検査の業務に寄り添える建築はどうあるべきか考えました。
まず事務棟は木造建築の要求があることから、出来る限り木を感じる空間でストレスの少ない環境にする。 木造で大空間を支えるための構造の工夫として、4本の一般的流通材を組み合わせることで、欠損の少ない柱と梁の強固な仕口を作り、強くて広がりのある執務空間つくりをしました。
検査棟はバイオセイフティレベル確保の面から、構造は鉄筋コンクリートです。
機能面の充実を第一に、検査員さんとのディスカッションを重ねました。 検査の準備や帰還時の衛生管理機能の向上、検査室の機器更新時に対応した廊下や出入口寸法、床下、屋根裏の設備更新可能な空間確保などをしっかり検討しました。
事務棟・検査棟ともに、建物全体を外断熱化することで、外気温変化が室内温熱環境への影響を小さくしました。 特に木造事務棟は太陽熱利用の空気循環で室内温熱環境のアメニティを高め、換気機能のレベル高め臭気対策を行うことなどをテーマにしました。 常に空気循環を行うことで、コロナウイルスやインフルエンザなど施設内での感染症対策にもなります。
県内外からの来訪者への対応で使われる大会議室に太陽熱利用パッシブソーラーシステムを組み入れており、環境教育にもつながれば嬉しいです。